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御菓子司 寶月堂(2) 2021-03-26

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「古いものに新しさが宿っている」

「御菓子司 寶月堂」高畑響子さん インタビュー(2)

丸亀の港町。ひとつ、またひとつと当時の町の歴史を物語る建物が解体されていく中、一際目立つ漆喰の建物があります。寶月堂さんは今年創業104年を迎えた、老舗の和菓子屋さん。代表の高畑さんは創業100年をきっかけに、新しい価値を生み出すべく、歴史ある建物の面影を残しながら、大規模なリノベーションをされました。そんな高畑さんに、古いものを残していくこと、未来へ繋いでいくことについてお話を伺いました。

※(1)はこちらからお読みください。


お店にいながら感じる若者の価値観の変化

今このあたりは古い建物がどんどん減ってきています。ご自身が古い建物が好きということは前提にあると思いますが、それを残していきたいという気持ちのベースに流れてるものってどういうものなんでしょうか?

やっぱり、昔からの城下町には古い建物が似合うというのは、変わらずずっと思っていて。ここの前の通りというのは、昔の本当の目抜き通りだったらしいんですよね。警察があったり、商工会議所があったり、映画館があったり。商店街ができてからは少しずつ変わりましたが、元々はそうでした。

私自身がそういう所で育ったので、愛着があって、新しい新建材を見ても心がときめくものがないというか……古いものはこんなに丁寧に作ってあるというのが好きなんですね。細かい細工や手仕事を感じるところが至るところにあって、そこに心惹かれるものがあったんじゃないかと思います。

でも最近、そう感じるのは私たち世代だけではないなと思うようになりました。娘夫婦2人が経営に参加するようになって、お客様の層も若い方が増えてきたんですが、「この通り知らなかった」って言う人が意外と多いんですよね。
だけど来てみたら、「面白いな」という発見があるみたいで。加えて、この建物も若い方がいいなって言ってくれることが段々増えてきました。

分かりにくくて細い道にあるお店だけど、駅やお城にも近い中心市街地にこの古い建物があるというのが、意味があると思っています。

なるほど。
今回の取材は、その土地で長らく商売されている方を紹介しながら、新しい人や若い世代の人が、この土地へ入ってきて、ここにある風景を次世代へどうやって繋いでいくか、どこにビジネスチャンスを見出せるかみたいな気づきになるといいなと思っているんです。なので、そういうお話を聞くと嬉しいですね。お店に来たことをきっかけにエリアの魅力に気づくというような…

そうですね。新しく何かを始めようとする時、確かに新しいテナントのようなところに入るのも1つなんでしょうけど、古い建物は古い建物で個性を出すとかそういった点では良いのかなと思います。あとは、例えば飲食店1つにしたって、このエリアはそもそもの母数が少ないので、競合も少ないですしね。

そうですよね。ビジネスする側とお客様の、それぞれの発見から化学反応みたいなものが起きるといいなと思ってます。

そうですね。本当にいろんな方が来てくれたら嬉しいですね。


古い町はもう作れない。だからこそ守っていきたい

エリアに関して、課題に感じていることはありますか?

城下町の良さというのが、どんどん無くなってきているということでしょうか。
時々昔のポスターを見ると、城西小学校の南に蔵造りの通りがあって、お城がキレイに見える写真がよくあるんですよ。壁一面が七宝柄の漆喰の模様になっていて…そういうのは残したかったなというのは本音ですかね。

個人では解決できないこともあるでしょうから、そこは行政も一緒に残せるような形を模索できたらいいなとは思います。

なるほど。今後この町がどういうふうになっていくといいなと思いますか?

そうですね。景観景観と言っていますが、景観は私1人ではもうどうにもならないことで。古い建物はどんどんなくなっていくんですけど……賛同してくれるか分かりませんが、今古い建物も、昔ほどは「古いのは嫌」という人は少なくなっていて、リノベーションして再活用しようという方も一定数いらっしゃいます。なので、そういった方たちが営むお店が点在していて、「面白いお店があるエリア」に…趣も含みで楽しんでもらえるような町づくりができるといいなとは思いますね。

古い町というのは今から作ることはできませんから。どんどん新しくなっていく。その中で、それらをいかに利用して、どうやって楽しい町にしていくかということを町全体で考えられるといいですね。

ありがとうございます。最後に、和菓子を通して、次の世代に何を伝えていきたいですか?

和菓子って、なんか古いモノみたいな考え方がちょっと昔にはあったんですけど……洋菓子は新しくて、和菓子は古いみたいな考え方ですね。でも、和菓子は和菓子の面白いところ、新しいところがあると思っていて、そのあたりはよく娘と話をするんですが、娘も理解しているので、若い人が食べてみたいと思うような和菓子を作っていこうと話しています。

古いものも大事にしつつ、和菓子の新しさというのを追求していきたいですね。その点では、建物も同じかもしれませんね。古いものに、新しさが宿っていると思います。


伝統を進化させながら、和菓子と建物、延いてはご家族の歴史を引き継いで来られた高畑さん。その温かく深い想いはまた娘さんご夫婦に引き継がれていくんだろうなと感じました。
現役でいながら、ご自身が引退したら始めたい夢もお持ちのようで、にこやかにお話するその姿に、ポンと背中を押されたような気分でした。ありがとうございました!

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