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旅籠屋Tonbiii 2021-03-26

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「後世に残るものづくりを通して、この町から世界へ」

「旅籠屋Tonbiii」清水 雄高さん インタビュー

港町のシンボル・太助灯篭の目の前に、丸亀伝統の団扇作りや藍染の体験ができるゲストハウスがあります。「旅籠屋Tonbiii」。藍や竹などの自然のものを相手に日々ものづくりをされているTonbiiiの清水さんに、ご自身の活動やこの町への想いについてお話を伺いました。


丸亀・四国の文化をもっと広められる場所へ

「旅籠屋」ということですが、ゲストハウスの他にも藍染と丸亀団扇の体験もされてるんですよね。徳島の藍染と丸亀の団扇、関連性がないように思いますが、きっかけはなんだったんですか?

僕はもともとアトピーがあって、身体のことを考えて、本当にいいモノを調べていくうちに「藍」に出会いました。空や海が好きだったので藍の色にも好感が持てて、初めて藍染の体験をしたのが4年前です。それを機に休みになると、四国内のいろんな藍染め工房を訪ねて体験を重ねました。どんどん藍の世界にはまっていって、仕事の傍らで独学で勉強をしてましたね。

それと別に、身体のことを調べていく中で環境問題や食事の問題にいきついたこともあって、自然や環境に負担のない仕事にシフトしたいという想いが芽生え始めていた時期でもありました。「何しようかな~」って考えていたんですよね。
そんな時に地元の団扇産業に目がとまって。それで港の団扇ミュージアムを訪ねたら、後継者養成講座というのを見つけました。養成講座は毎年11月に開催されてるんですけど、それを受けるタイミングで前職を退職しましたね。それからしばらくは、バイトをしながら団扇を作る生活を。

そしたら次は団扇を作る工程で、骨を藍で染めたいという気持ちが出てきて……趣味だった「藍染」と修行して習得した「団扇」を1つにしようと思って始めたのがきっかけですね。
それで2018年の夏に、こことは別の場所で藍染と丸亀団扇の工房を始めました。

そこからこの港町に移ろうという気持ちになったのはどういった理由からですか?

やっていくうちにもっと丸亀団扇や藍染を広めたくなったんですよね。場所が少し辺鄙な所にあったので、人の目に触れやすい場所、伝えやすい場所でやりたいという想いが湧いてきました。

一時期、友人が金毘羅さんの参道に物件を持っていたこともあって、その場所でやろうかなと思っていたんですが、丸亀市のふるさと納税をやらせてもらっていたり、そもそも団扇が丸亀だったり、僕も丸亀出身なので、丸亀にこだわってやりたいという想いもあって、並行して丸亀でも物件は探していました。

そんな中、ある時丸亀市の観光協会の方に相談したんです。前の工房の時に、観光協会の方が取材に来てくれたことがあったので、なんとなく「僕琴平行くかもしれません……」みたいな感じで。

そしたら、観光協会の方がこの物件を紹介してくれました。

それは嬉しい展開ですね。

はい、実際に物件を身に来たら、太助灯篭は目の前にあるし、丸亀団扇の創始者の瀬山登さんの像もあって「ここはめっちゃ頑張れる!」と思いました。
加えて駅も近いし、観光客に丸亀団扇や徳島の藍染など四国の伝統を伝えていけるなと思って、ここに決めました。

即決ということですか?

そうですね。

決める際に周辺環境など、少し歩いてみたりはしましたか?

いえ、この町に入る時は町がどうというより「この場所や!」という想いの方が強くて、早く始めたかったので、この場所をどうリフォームするかとか、そんなことでいっぱいでしたね。
その頃は、作業する場所がなかったので場所が欲しい一心で、1日でも早く環境を整えることしか考えてなかったですね。


セルフリノベーションの隙間に地域の方と関係作り

この建物はもともと何に使われていたんでしょうか?

民家ですね。ここで暮らしていた方がご高齢だったので、ご家族と同居することになり、それで空き家に。

状態は大分傷んでましたね。土壁の上からプリントベニヤを貼ってたんですけど、それを剥したら壁が朽ちていたりと……そんな感じでした。なので改装は、解体からしましたね。

もしかしてセルフリノベーションですか?

そうです。今藍甕を置いている所も、以前はこの和室と同じ高さだったんですよ。でも藍染には土間が必要なので、床と壁と天井を全部剥いで…解体からのスタートでした。
ありがたいことに、オーナーさんからは「好きにいじっていい」と言われていたので、傷んでいるところを直しつつ、自分好みにしていきました。

とはいえ、元々そういう知識があったんでしょうか? 私だったら、もう何から手を付けたらいいか分からなくて、調べるだけで徒労に終わりそうです…

配管や電気工事、あと土間打ちは知人に頼みました。それ以外は調べながらですね。解体に加え、漆喰や柿渋を塗ったり、大工仕事をしたり……以前の工房でも一度納屋の改装はしてたので、当時の経験を頼りながらという感じです。

ただここは2階部分もあったんで、当時とは比にならないですよね。
さすがに最初は途方にくれましたよ。「あれ……これ全部やんの? やばいな……でもこれやらんと始まらんしな……」みたいな。漆喰塗りは2階から始めたんですけど、1階に到達するころには上達してました(笑)

(笑)それは上達しますね。実際に今の状態になるまで、どれくらいの期間が必要でしたか?

2か月ちょっとですかね。朝から夕方は音がうるさい大工仕事をして、日が暮れてから夜更け前までは静かな塗装作業を。早くお店を作りたい、始めたいという想いが強かったので、もうずっとやってました。

結構目立つ場所なので、トンカンやってると、ご近所さんもあそこ何かやってる……みたいな感じで、覗きにくる方もいたんじゃないですか?

ありましたね。それが逆にコミュニケーションを取るきっかけになりました。
「何が出来るん?」みたいな感じで尋ねてくる方が大半で、藍染と団扇のことを話すと、ご近所のおばあちゃんとかが「私も昔団扇作ってたんよー」とか言ってくれて。
全盛期は子どもたちも学校から帰ってきたら、親と一緒に家族みんなで団扇を作っていたとか、そんな話も聞きました。土地の持つ歴史もあって、共通点が自然とできていったのと、僕の知らない当時の話も聞けて、良かったです。


迎える人、訪れる人が横の繋がりが持てる町に

お住まいもこちらということですが、1年と少し住み続けてみて、このエリアに対してどのような印象をもたれてますか?

横の繋がりがすごいなとは感じてます。人情味溢れる方たちがいっぱいいるなぁと。

SNSを拝見しました。コミュニティというか、同じエリアで事業をされてる方との交流などがそれですか?

そうですね。ミロクビールさん(北平山町)、トレアピさん(通町)、ぶつぎりたんちゃん(西本町)の方とか、みんな30代で同世代なんですよ。そこでできた横の繋がりは大切にしながら、地域を盛り上げていきたいとは思っています。
あとはミキcafeさんのようなレジェンドもいらっしゃるので、多世代で交じり合って、いい町おこしが出来たらと、その一員でいたいなと思います。

よい関係作りができてるんですね。その方たちとこの町について、お仕事についてお話をされることもあると思いますが、清水さんご自身が課題と感じていることはありますか?

少し話が大きくなりますが、いわゆる日本の文化を生業にしてることもあって、もっと世界に届けたいとは思ってるんですよね。丸亀はこんぴら丸の歴史やお城もあるので、町全体としてのPRを上手くできたらなぁとぼんやり思うことはあります。

今は新型コロナの影響で減っていますが、ここ1年やってきた中で、外国の方の方が日本文化に対する感動が大きくて……新鮮だから当たり前かもしれないんですけど、なので、外国の方がすごい! と言ってくれることで、日本人が日本の文化に対して、改めて良さを実感するような、逆輸入みたいな感じで日本のいいところを見つけてもらえたらいいなと。

それができると、新しいものを作りださなくても、既にあるものをブラッシュアップするだけでこの町の魅力も十分に引き出せられるんじゃないかなぁと思っています。

そのためにも世界に向けて届けたいなぁと、なんとなく思ったりすることはありますよね。

なるほど、それは一理ありますね。日本のものづくりって、手仕事の美しさみたいなものがありますよね。なかなか触れることが少なくなってしまいましたが、そういうものに心惹かれる部分はみんな持ってるような気がします。

そうですよね。だから僕は僕でその美しさを藍や団扇で発信し続けていきたいなと思っています。物は後世に残るので、そういう物を作れる人になれるよう頑張りたいところです。

ありがとうございます。最後にこの町がどのように発展していくといいなと思いますか?

ここでお店をするようになって、観光客の方が一定数訪れる町ということを改めて実感しました。その方たちが魅力的なお店に繋がれるといいなと思うし、その方たちを地元の人みんなでおもてなしできるような雰囲気になるといいなと思います。
1度目はスポット目的で港町に来たけど、2度目は1度目旅行した時に出会ったあの人に会いに行くためにまた戻ってこようと思えるような。そんな風に思える場所になると嬉しいなと思います。

それにはやっぱりこちら事業者側の連携も必要だと思っていて、なので今の横の繋がりは継続してより強いものにしていきたいと思っていますね。


今回の取材をきっかけに、私も藍染の体験をさせていただきました。こちらでコントロールできない藍を相手に、染めを施す過程の中で、清水さんの優しく温かいお人柄は、自然のものを相手にすることで「あるがまま」を受け止める、無理のない心地よさから来ているんだなと感じた次第です。改めて町のオアシス的存在であり続けて欲しいなと感じました! 次回は団扇作り体験したいと思います! ありがとうございました。

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